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「出会い再び」

『騰蛇』
いつもより早い帰宅に昌浩が戻り橋付近を歩いているときだった。
六合が物の怪の名を呼んだ。
それに対し、物の怪は無言で頷く。
「どうしたのもっくん、六合」
昌浩が首を傾げたときだった。家のほうから何か違和感を感じた。
安倍の屋敷は晴明によって結界が張られている。
その結界の中でもうひとつ結界が張られたのだ。祖父が何か調べ物のために結界を張ることはあるがそれとは何かが違った。
結界が張られる瞬間殺気が屋敷を取り巻いたのが分かった。
何かがあったのだ、天下無敵の大陰陽師安倍晴明の屋敷で。
「急ごう!!」
昌浩は駆け出した。


安倍の屋敷には結界が張られたままだった。誰かが強行突破したような雰囲気は微塵もない。
何事もなく安倍家の敷居を潜るには安倍の者に許可を与えられなければならない。
それは安倍の者なら誰でもいいのだ
つまり、露樹でも彰子でも問題ない。
「隙をつかれたか」
相手はそこそこ頭がいいらしい。
「昌浩は彰子たちのところに行け。晴明のところは俺が行く」
瞬き一つで本性に戻った紅蓮は昌浩を促す。
「でも、」
どうなっているのか分からないのに、
そう顔に出ている昌浩は六合に視線を向けた。
「天后は結界を張るのに長けていない」
天后の結界に入るには同胞である紅蓮には可能だが、昌浩が入るには天后にこちらの存在を知らせなければならない。それは相手に隙を見せる可能性がある。
そういえば、昌浩は頷いて踵を返した。
「二人は?」
「お前の部屋だ」
六合に任せた、と視線を向けると無言で彼は頷く。
紅蓮はそのまま晴明の室へと足を向けた。


天后の結界を通り抜ける。一瞬結界が撓んだ。
けれどそれは相手にはわからないくらいのわずかな撓み。
結界の内側には同胞の殺気が渦巻いて、見知らぬ気配を持つものへと向けられている。
まさに一触即発。
と、炎の気配が結界内を覆う。青龍が大鎌を振り上げたのが見えた。

――――駄目だ!!
女の気配とその炎。そして何よりも本能が告げた。
とっさに主の顔をみる。
晴明は何かを考えているようで、何かに気づいたようなその顔に叫びが疑問系に変わる。
「晴明!?」

「……とう…だ?」
そう呟いたのは誰であろう、敵であるはずの女で。
振り返ったその女は、信じられないものを見るような顔をした。
「…会えるなんて……」
紅い唇から零れた言葉は震えているように聞こえた


――――――
デアウハズノナカッタフタリガデアウソノイミハ?


えっと、微妙に話しにずれが出てきています。
が、がんばって修正するもん。
次はようやっと・・・。
八巻十巻




h20/12/4
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