目録
「出会い」



「いち、連れていきな」

女が呼ぶと、女の傍らに人影が現れた

「お姉ちゃんは来るの?」

そう聞く子供に女は笑う

「もちろん。さあお行き」

いちと呼ばれた人物は子供とともに去っていく

「待てっ!!」

「昌浩!!」

昌浩が二人を追いかけた

勾陣と六合も共に追いかけようとするが、女が放った炎がそれを邪魔する

「私を止めようとはいい度胸だ!!」

叫ぶとともに二本目の筆架叉を引き抜き力を解放する。後ろでは六合が同じく銀槍を構えていた

くすりと女が笑う

それは挑発ともとれる笑み

「何が可笑しい」

勾陣は声をあげた

彼女の笑いが何故だか癪に障る

何かを忘れているような気がして

女はしばらく笑い、笑いを収めたあとは腕に炎をまとわせた

「確かに、十二神将勾陣に六合の二人に戦いを挑むには今は不利。いいだろう、今回はここで引こう。しかし、たとえそっちが万端だとしても、本当に勝てるかな?」

女はそう笑うと炎に包まれて消えた

勾陣と六合はあたりの気配を探るが、あの女の力は感じられず、急いで昌浩の後を追う

その途中六合が勾陣に呼びかける

「勾陣、さっきの女だがどうして俺たちが十二神将だと知っていた?」

「確かに。名乗った記憶はないな。私たちの存在を知っているというわけか」

「それに……」

六合が何かを言いかけてやめる

勾陣もそれに反応はしなかった

おそらくは同じ事を考えているはず





「待て!! そこまでして力が欲しいのか!!」

子供と人影を追いかける昌浩が叫ぶ。その声にいちと呼ばれていた人影の歩みが止まった

「力? そんなものはどうでもいい。でも、そうしないと新たな犠牲がでる。私たちはそれを止めたいだけ」

振り返ったいちは袈裟が外れ月の光に顔が分かった

年は朱雀よりも年上。瞳は夏夜に茂る若葉を思い出し、肩につかない不ぞろいの髪をもつ女

「新たな犠牲?」

「そうだ」

張りのある低めの声が答える

「何を根拠にという顔だな。けれど、それは遙かなる昔からの誓約。それを違えることは神でも不可能」

そして彼女は悲しそうに目を伏せる

「……そしてそれを防ぐために、とみは自ら堕ちた」

「とみ? さっきの女の人」

「そうだ、そして私は彼女の名を呼ぶ権利を与えられていない」

その悲しそうな顔に、声に昌浩は声を発せなかった

「……それは、」

「時間だ」

そう言うといちは昌浩に背を向け、子供と目線を合わせた

「幼子よ、また迎えにくる。今回はこの子供と行くがいい」

不安そうな子供の視線にいちは笑う

そして彼女は子供の背を押した

「どういうつもりだ」

昌浩は眉を寄せる

「勾陣と六合が追ってきた。私は攻撃するすべを持たないのでね。これで失礼する。幼子を頼んだよ」

そう言うといちは光とともにきえた







――――――
シッテイルリユウヲダレモシラナイ


陰陽師好きなら彼女が誰か分かりますよね(えっ、分からない?)
分からないなら分かるまで待ってください
まぁ彼女出す人私見たことないですけど
分かった方で嫌だと思われた方はお引き取りくださいますようお願いします




四巻六巻


h20/6/2

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