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――オオオオオッ
声と共にずるりと触手が見えた
「奴の腕だ」
騰蛇の眉間に皺が刻まれる
紫色をしていて気持ちが悪い
これは太陰でなくても色を失うだろう
「結界を」
「駄目だ」
天后が咄嗟に築こうとしたが騰蛇に止められる
「どうして?」
疑問の声に騰蛇は触手から目を離さずに続ける
「こいつらは後から後からわいてくるんだ。今から結界を張ると持たないぞ」
実際に経験済みだ、と嘆息しながら呟いた
触手はゆっくりと三人に近寄ってくる
「天后」
一歩下がってきた騰蛇が天后に届くくらいの声で呼んだ
「何?」
天后も緊張しているのか声が硬い
騰蛇は返事が返ってから続ける
「合図をしたらお前と太陰の二人分だけ結界を築け」
「……分かったわ」
あなたは? などということは聞かない
騰蛇にそんな言葉は不要だ
返事をすると、それまでは築くなよ、と忠告して騰蛇は二、三歩前にでた
触手はどんどん増えていく
しかし一向に襲ってくる様子はない
それが見定められているようで、取るに足りないと思われているようで、腹が立つと同時に寒気がおそう
「とう…だ」
無意識に呼んだ
なぜかは分からない
自分より、否、同胞の中で最強の存在にすがるように声が出た
「集中しろよ」
冷たくもなく穏やかな声が降ってくる
それに安心したのか肩の力が抜けた
その時揺らめいていた触手が一気に襲い掛かってきた
「騰蛇!!」
「まだだ!!」
咄嗟に叫んだが、騰蛇自身は気にもせず炎蛇を召喚し攻撃させる
触手は地獄の業火に焼かれ灰も残さず消えていく
と、数本が騰蛇の炎をかいくぐり天后と太陰に迫ってきた
「天后!!」
騰蛇が叫び、その声に答えて天后が結界を張る
「くっ」
結界にぶつかった衝撃で結界が歪んだが、瞬時に張りなおす
もともと天后の結界を張る能力は強くない
騰蛇もそれを分かっているから声をかけた
「もたせろよ!!」
「分かってるわ!!」
「太陰も分かってるな」
強くならないように語調を選ぶと、涙声になりながらも答えが返ってきた
「…わ…かったわよ!!」
騰蛇はそのまま駆け出す
触手の向こうに見えた、化け物の本体
それに攻撃するために
本体が弱らない限り末端の触手の攻撃が収まることはない
先ほどは天后が気絶していて、そんなところに二人を置いてはいけないからその場にとどまった
もちろん攻撃が届く確率も低くて、余計な力を使ってしまったことは否めない
けれど混乱状態の太陰を置いていくわけにも行かなかった
「まったく、貴様のせいだ!!」
すべての怒りを込めて化け物の本体へと攻撃を放つ
「太陰!!」
呼んだ声に応えて背後から風が舞う
自分の周りに障壁を張り巡らせやり過ごす
「……やった、の?」
天后の呟きが聞こえた
続
――――――
すみません!!
続きます
予定では前五話くらい……
ってか誰かこの組み合わせ好きな人いませんか!?
h20/4/3
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