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輝くもの
「あ、流れ星」
空を見上げたら丁度一筋の光が流れた。
人はあの星に願いをかけるらしい。
くだらない、と思ったこともあったけれど、神に縋るようなものだと彰子姫に言われた。
「どうしたのだ」
声に振り向くと、玄武がこちらに歩いてきたところだった。
私の隣に立って、私が見ていた空に視線を向ける。
けれど、そこには既に何もないから、私は説明のために指を空に向けた。
「さっき丁度流れ星が流れていたの」
「珍しいな」
そうね、と私も頷いた。
「人は流れ星に願いをかける風習があるらしいな」
先ほど私が考えていたことを、玄武は口にする。
同じ水将だからか、潔癖なところとか、考え方が似ることがある。
それが面白くて、私はクスリと声に出さずに笑った。
「神様に縋るようなものだって彰子姫が仰っていたわ」
私たちはそんなことはない、と知っているけれど。
「神に? なら、あれは神の成れの果てかもしれないな」
玄武の言葉の意味が分からなくて私は首を傾げる。
「神は誰の願いも叶えない。でも、信じられなければ消えていく。なら、消えゆく最後の瞬間に人の願いを聞こうとしているのかもしれない」
玄武はそう言った。
「この国は神の国だから」
人の思いで神が生まれる場所だから、と玄武は私を見上げた。
「八百万神っていうのだろう」
と玄武は首を傾げる。
私はええ、と口にするしかなかった。
さっき、私は玄武と考えが似ていると思った。
けれど、今そんなことはなかったのだと考えを改めた。
だって玄武の考えも私の考えも、全然似ていなかった。
「考え方って本当に違うわね」
「一緒だと問題だろう」
意味が分からない、というように玄武は目を瞬かせた。
「そうね。けれど、私はそのことを忘れていたのよ」
私はそうして玄武に微笑みかけた。
空には星が輝いている。
玄武がいうように、星が神なら、私は今も輝いているのだろうか。
そう呟いたら玄武はまた目を瞬かせて笑う。
「我らはきっと同じ場所に固まっていると思う」
そうね、きっとそうだわ。
「きっと同じときに産まれて、同じときに死ぬのでしょうね」
空が明るみ始めた。
また、今日がはじまる。
――――――
毛並みが変わった話になった。
h21/11/23
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