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真実は
「ねえ太裳」
「はい、なんでしょう」
のんびりと縁側でお茶を飲んでいた太裳が首を傾げた。
目の前にはふわりと太陰が浮かんでいる。
「それどうするの?」
と幼い子どものように太陰が首を傾げた。
「これ、ですか?」
と太裳が持っていたものを太陰に見せる。
「そう。それ。どうする気」
「いやぁ、青龍に似合うんじゃないかなって」
「……それ本気?」
「冗談なんて言いませんよ」
本気です、と笑顔で言い放った。
太裳が持っているのは紫陽花。
それも青い紫陽花である。
ただ単に綺麗だな、どうするのかな、よかったらもらえないかな、と思って聞いたのだが。
思いも寄らぬ答えが返ってきた。
太裳がその花を青龍に渡すところに居合わせたくはない。
早々に立ち去るべきところだが、なんとか思いとどまった。
今、太陰がするべきことは、その花を太裳が青龍に渡すことを阻止することだ。
今逃げても、太裳がこのようなことをやめることはない。
いつか自分の目の前で青龍の怒りが爆発するのは見たくない。
ならば、今ここでそんなことをやめさせればいいのだ。
そうすればこれから先も安泰。
太陰なりに考えた結論だった。
「た、太裳。悪いことは言わないわ。それ、青龍に渡すのはやめなさい」
「え、どうしてですか?」
太陰の言葉に太裳はきょとんと目を瞬かせた。
「どうしてって、そんなのやっぱり男が貰って嬉しいものじゃないでしょ」
そうして太陰は力説する。
「そうですかね」
「そうよ」
「なら、天后でも」
差し上げましょうか、という台詞に、太陰はひぃぃと悲鳴をあげた。
青龍に渡すのは反応が恐い。
けれど一番恐いのは天后に渡すことだ。
太陰は青龍が天后を気にしているのを知っている。
あの堅物が、とは思ったけれど、実際無自覚なのだから、堅物で間違いない。
もし、まかり間違って太裳が青龍の前で天后に花なんて渡したら、あたり一面が氷点下になること受けあいだ。
それならば最初から青龍に渡してくれたほうが、よっぽどいい。
「天后、もやめておいたほうが……あー、て太裳?」
くすくすと笑い出した太裳に、太陰は頭を抱えながら視線を上げた。
「ごめんなさい。少し可笑しくて。はい、これ」
そして太陰の目の前に紫陽花の花が差し出された。
「へっ?」
「どうぞ。気に入ったんですよね」
どうぞ、ともう一度差し出されたので、太陰は思わず受け取った。
「欲しい、と仰れば渡そうと思いましたが」
余りにも反応が面白かったので、と太裳は太陰にわびた。
太陰はそこで自分がからかわれていたことを理解した。
「太裳、酷い」
「本当にすみません。そうそう、知ってます。紫陽花の花言葉」
太裳が紫陽花を見て目を細めた。
「花言葉? 知らないわ」
「『元気な女性』太陰にぴったりですね」
「どうせ私は騒がしいわよ!!」
拗ねたように太陰は口を尖らすと、ぎゅっと紫陽花を抱きかかえた。
「ありがと」
そう言って、風を身に纏う。
いつもよりも柔らかい風は、紫陽花を散らさないようにだろう。
「いいえ、どういたしまして」
そして太陰は空に舞い上がった。
「知ってます? 紫陽花の花言葉はもう一つ。『辛抱強い愛情』っていうんですよ」
そう言って太裳は笑った。
――――――
白太裳書いてたはずなのに、いつの間にか黒太裳のうえ太裳→太陰
あっはっは。
後悔はしていない。
つか、太裳が私の中ではタラシ設定っぽい。
h21/11/13
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