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たまには
異界の空はどこまでも広く、果てしない。
しかし、その果てを知るものは誰もいない。
自分たち以外に誰がいるのかも知らない。
その一角。
十二神将と呼ばれる者たちが住まわる場所。
彼らを束ねる天空がひとり果てなき空を眺めていた。
空はどこまでも曇っている。
晴れることは決してない空。
「翁?」
声がかかる。
「太裳か。何用じゃ」
「いえ、特に用ではないのですが」
そう言って太裳はくすり、と笑う。
「実は、先ほど成親様と昌親様が来られていまして」
それだけで天空は大体の意味をさとる。
「また昌浩で遊んでおったのか」
天空の笑う気配に太裳はおや、と目を僅かに瞠った。
めずらしいこともあるものだ、天空が笑うとは。
しかしそれを指摘することも無く太裳は再び微笑む。
「ええ、しかし成親様が彰子様まで巻き込もうとしていまして」
「あれは晴明の性格を一番に継いでおるな」
そういう意味では彼もまさしく晴明の孫であった。
「昌親様も昌親様で、口だけで止めることはしなくて」
仕事場では役職名を呼ぶことで、公私を分けている昌親だ、兄弟として会うことはいい息抜きになっているのだろう。
「他の同胞はどうしておった?」
これまた珍しい天空からの質問に、しかし太裳は笑顔で答えた。
「天一は彰子様が巻き込まれるのを心配していて、朱雀はそんな天一を心配していましたよ。勾陣や騰蛇も傍観していて、見ていて昌浩様が可哀想でした」
「お主も見ているだけか?」
「成親様に文句を言われるのはごめんですから」
どこまでも広がるその土地に小さな笑い声が響き渡る。
「平和だのう」
天空がそう呟く。
晴明という主が出来てもこのような日々は考えられなかった。
変わったのは、やはり13年前。
これからますます忙しくなるだろう。
一度流れ始めた流れはとまらない。
それはさらに大きな流れになってわれわれを飲み込もうとするだろう。
分かっていても止められない。
時とはそういうものだ。
誰もがわかっている。そしてそれを見ない振りをしているのだ。
「ええ、平和ですねえ」
それは自分たちも同じ。
だから、今このひと時を
たまには心安らかな日を
このつかの間の休息を
残された時間はあまりにもすくないのだから
――――――
短かった。太裳に成親様の組み合わせが好きです。
h20/9/20
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