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一緒
「何がいいと思う?」
六合の姿を見た瞬間、霊布を掴み、引きとめた朱雀は唐突にそう尋ねた。
「唐突になんだ」
六合がこう答えるのも当然だろう。
けれど朱雀はその答えに興を削がれたように口を尖らせた。
恋人である天一には効いても、六合には効くはずがない。
ため息を吐きつつ、六合は朱雀に説明を求めた。
「天貴への贈り物だよ」
当たり前だろ、とでも言いそうに断言した朱雀。
「それを何故俺に聞く」
いつもは口数が少ない男だが、恋に盲目な男の前では口を開く。
何故か。
理由は簡単だ。
朱雀が自分の中で会話を完結させるため、話しをしなければ六合が理解できないのだ。
いつもは言葉が足りない六合の声を聞き、理解してくれる朱雀だが、恋人のことになると別人のようになる。
曰く、天一が世界の中心だと、真顔でのたまう男だ。
いつものように相手に出来るわけがない。
「お前が送るものなら何でも喜ぶだろうが」
早く切り上げたいのは山々だが、けして許してはくれないだろう。
それこそ件の天一が現れない限り。
「それは当たり前だろう。しかしだな、珠には俺が考え付かなさそうなのを贈り物にしようかと思ってな」
「それでどうして俺なんだ」
「風音がいるだろう」
それでようやく合点がいく。
十二神将で恋人がいるのは朱雀と天一の他には六合だけだ。
だから朱雀は六合に尋ねたのだ。
お前なら恋人に何を送る?と。
「今は、布。だな」
「布?」
目を瞬かせた朱雀に六合は頷いた。
「この間新しい衣が必要だと言っていたからな」
女房として、必要なのだ、と言っていた風音を思い出す。
「俺たちには必要がないがな」
それもそうだ、と朱雀は頷いた。
「でも、何か作ることは出来るだろう」
布から作られるのは着る物だけではないのだ。
「そうだな、ふむ、布か」
朱雀はそう言って立ち上がった。
「少し考えてみる。助かった」
ではな、と朱雀はそのまま屋敷の外へと足を向ける。
同胞の少女が操る風のようだったな、と思いながら、六合は主の下へと向かった。
――――――
六合も惚気させれなかった。
h21/11/15
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