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最もつよき者
曇り空が辺りを暗くする。
異界の空気を思い出し、騰蛇は眉を寄せた。
騰蛇は自分たちが住んでいる場所が好きではない。
同胞を嫌うわけではないのだが、だからといって常に一緒にいたいとも思わない。
そのため、同胞が集まる異界を嫌ったのだ。
「最悪だ」
なのに、最近頻繁に同胞がそろってしまうのだ。
「なんで翁までここにいるんだ」
「儂がここにいては不味いか?」
そうは言っていない。
いや、言っているが、そういう意味ではない。
「最近異界から出てくる確率が高くないか?」
「気のせいだろう」
「気のせいって……」
気のせいにするには天空が異界から降りてくる数は多すぎた。
むしろ、たった一度だけ降りたとしても、何があった!? と誰もが混乱するはずだ。
それが最近頻繁に降りてきている。
それと同時に同胞も天空が人界にいることに慣れてきた。
騰蛇はそれが恐い。
「翁、何を考えている」
騰蛇の険しい視線にも天空は動じない。
それもそうだ。
天空は十二神将を束ねる存在。
そして十二神将最強の守りの力を持つ存在。
「天空、何を隠している」
答えない天空に騰蛇はゆらりと神気を立ち上らせた。
天空は閉じていた目を僅かに寄せる。
「儂を盾と称すると、お主は鉾じゃ」
「天空、意味が……」
滅多に開けない視線が僅かに騰蛇を射抜く。
口を開いた騰蛇がその視線に射抜かれて、口ごもった。
「騰蛇。もうすぐ移り変わる。他のものはまだ決めておらん」
騰蛇は思わず息を呑んだ。
「天空、お前は決めているのか?」
「お主は決めておるのだろう。なら、答える必要はあるまい」
それは誰が何と言おうとも覆さない、騰蛇の信念を知っての言葉。
それで騰蛇は確信する。
「時が過ぎるのは早すぎる」
呟いたのは、騰蛇か天空か。
――――――
天空に頼みごとをした晴明。
それを騰蛇に教えたという話。
h21/11/21
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