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こどものちから
「何をしてるんだ」
十二神将白虎は、若干呆れた様子を見せながら、声をかけた。
「おう、白虎か。いや、なに昌浩がな」
十二神将最強にして最凶の男が、仮の姿とはいえ、泥にまみれた姿で庭に落ちていた。
いや、言葉に語弊があるわけではない。本当に落ちている、という表現が相応しいくらい、地面に横たわっていた。
これは本当に十二神将で一番恐れられている男か、と白虎は遠くを見たくなった。
話しを聞くと、どうやらまたしても藤原敏次に対してとび蹴りを行ったらしい。
「昌浩が怒るのは当たり前だろう」
「むむ、お前もあの似非陰陽師の味方か」
「味方かそうではないかの問題ではないだろう。お前がやっているのは太陰と同じことだぞ」
ただ、太陰と違うところは自分から逃げるか、逃げないかの違い、ただそれだけだ。
「太陰と同じ? 同じであるものか」
だいたいな、と物の怪がくわっ、と甲高い声で藤原敏次に対しての思いのたけを告げ始めた。
それに白虎は本当にこれは騰蛇か、と頭を抱えたくなる。
昔の彼は誰よりも仲間を思っていて、それゆえに孤独だった。
白虎も恐ろしい、という本能は押さえることは出来なかったが、だからといって近づかないようにしていたわけではない。
接するときは接するし、そしてそれは他の同胞に対しても同じだ。
ただ、太陰を押さえられるのが白虎の役目、というのが定着していたからか、よくあの幼い同胞と一緒に居たことは否めない。
最初は操る風のように何事にも興味がなかった白虎だが、太陰や玄武といることで、いつの間にか普通に同胞と付き合うようになったのだ。
「ああ、そうか」
「そうか、分かってくれたか白虎」
思った感嘆を口に出しただけなのに、物の怪は自分に同意したと思ったらしい。
思わず苦笑してしまうが、あえてそれ以上は言わなかった。
自分ももうそろそろ室内に戻りたい。
「子どもは偉大だな」
「偉大? それは違うだろ。あいつらは自分が勝手に育ったと思っている。自分だけの力で生きている、そう勘違いする生き物さ」
物の怪は後ろを振り返った。
見えるのは物の怪が最も大切にしている少年の部屋。
「だが、それに救われるのも事実だろう」
決めたことを回りに伝えないのはそれを自分で決めたことだから。
だから、自分の力だけで生きている、と勘違いしている、というのだ。
けれど、知らないうちに彼らが助けているものもあるのだと、白虎は暗にそう言っている。
「ふん。お前、そろそろ戻ったほうがいいんじゃないか」
「そう、だな。そうする」
晴明が起きたようだ。
伝えることもあるから、白虎は戻らなければならない。
「あまり昌浩を怒らせるなよ」
「うるさい」
本当にこれが十二神将で最も強い力を持つ神将なのか。
その考えは打ち消す。
「あのころよりずっといい」
かつての自分がそうであったように、変わればいいのだ。
――――――
何が言いたかったかって?
あんまり自分でも分かってない。
多分、二人とも、こどもで変わったんだよってこと。
ただ、決まったのは、私の設定で、白虎は昔感情を持ってなかったってこと。
h21.11.12
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