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「ときには」


きっかけはささいなこと。
それは時として、意外なものを敵とする。


「……だから!!」
「駄目だ、絶対に認めない。頼むから聞き入れてくれ」
見知っている声が争っているのを聞きとがめて彰子がそぉっと部屋を覗き込んだ。
中には十二神将の朱雀と天一。
天一は美しい顔を歪め泣きそうに、朱雀はそんな彼女に背を向けて目を閉じ、拳を握り締めていた。
普段から仲のいい姿しか見ないため、彰子はどうすることもできずに困惑するしかない。
「姫?」
「勾陣、もっくん」
聞こえた声に振り向くと、ほっとした顔で彼女たちの名前を呼ぶ。
呼ばれた二人は顔を見合わせ――物の怪は勾陣の肩にのっていた――彰子が覗き込んでいた部屋を覗き込んだ。
「何をしている?」
勾陣の言葉にようやく二人はそこに第三者がいることに気がついたようで、目を見開く。
「彰子様!!」
その場に彰子がいることに驚いたのか天一は声を上げる。
「彰子が困ってたぞ」
「それは……」
「……悪い。ほら、天貴」
すねたように朱雀があやまり、促すように天一に声をかけ手を差し出す。
いつもならば微笑んで手を取る天一だが、首を振った。
「天貴、」
「嫌です。心配してもらうのは嬉しいわ。けれど守られることだけは嫌なの」
そういうと天一は部屋を出て行った。
「天貴!!」
「天一!?」
それに彰子が追いかけた
追いかけようとした朱雀を勾陣は肩をつかんで引き止める。
「何があった、話せ」
「勾陣たちには関係ない。これは俺と天貴の問題だ」
そういって部屋を出ようとする朱雀に勾陣は怒ったように声音をあげた。
「天一をあれほど怒らせるようなことをして、それですむのか?」
勾陣の声音は朱雀に有無を言わせなかった。
朱雀はしぶしぶ口を開く。
「天貴が彰子姫の買い物についていくと……。この間負った傷が治ったばかりなのに。俺が晴明の用が終わるまでか、誰か別の奴を連れて行け、と言ったんだ」
それを聞いた勾陣はため息をついた。
「天一が怒るのも無理はないな」
「過保護すぎだろう」
物の怪が続けて言うと、朱雀と勾陣から意味ありげに視線を向けられた。
曰く、『お前がそれをいうのか?』
しかし、物の怪には伝わらない。
首を傾げて「どうした?」と聞いてくる始末だ。
あきれた勾陣は肩の物の怪を払い落とす。
「うぉ、いきなり何をする!」
騒ぐ物の怪を尻目に勾陣は朱雀に言い放った。
「しばらく反省してろ」



続きます。
相方に送ったマンガ原稿没案。
短くてすみません。
次で完結かな?





h20/8/21
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