戻る
神将は確かに眠ることを必要とはしない

だが、二人しかいない部屋に、一人でいるのは暇なんだ

昨日は確かに遅かった

結果、俺が悪かった事は認める

だがな、気持ちよく寝ているところに尻尾を掴んで、放り投げるのは酷いと思わないか?

「いて!! 何するんだ人が折角気持ちよく寝ていたってのに」

尻尾の痛みと、ぶつかった全身の痛みで目が覚めた俺はうめき声と共に抗議する

すると何故か昌浩に怒鳴り返された

「何が『人が折角気持ちよく寝てたのに』だ。大体もっくんは人じゃないだろ!!」

声は怒気をはらんでいたのだが、間々あることなので気にせず、昌浩の台詞に俺は感心した

「確かにそうだな。人がじゃなくて『神将が寝てたのに』か」

高尾神のこともよく「ひと」とは表さず「神」と表すからなぁ

「何言ってんだよ。『物の怪が』の間違いだろ」

ふむふむと考えていると、昌浩がぼそりと『物の怪が』のところを嫌味ったらしく言うもんだから、さすがに温和な俺も怒った

「誰が物の怪だ!! お前は本当にいつもいつも学習しないやつだな、俺は物の怪違う!!」

「学習しないのはどっちのことだよ。いつもいつも疲れてるときに限って人の眠りを邪魔して、大人げないと思わないわけ!?」

「人がじゃなくて、半人前がだろ? 晴明の孫!!」

言い争いをしているうちに、昌浩が身体を震わせて握りこぶしを作る

その時ようやく空気がいつもと違うことに俺は気がついた

昌浩の機嫌が直っていない

まずいと思ったときは遅く

「もっくんなんて大っ嫌いだぁー」

屋敷中に響き渡る声で昌浩が叫んだ



――晴明にどやされる

と思ったのも本当のことで、

部屋を出て行った昌浩と、入れかわりに来た六合にも、視線に「お前が悪い」と言われてしまった

ちくしょう



昌浩が出掛ける準備をする間、あやまろうと思ったのに

「紅蓮や」

嫌な声が耳に届いた

「何だ、晴明」

振り向くと晴明がじぃっと俺を見てくる

「……紅蓮わかっておるな」

ただ、それだけを言われた

脅しか……

「それじゃあ彰子、行ってくる」

その間に昌浩は準備を終え、玄関にいた

くそう、晴明のおかげであやまりそびれた

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

二人はいつもの言葉にいつもと同じ言葉を返す

そのあと昌浩は物の怪の名前を呼ぶのだ

しかし……

「行こうか、六合」

その言葉で俺は昌浩がまだ怒っているのを知る



「どうするか」

昌浩の部屋でうなっていると朱雀が現れ唐突に言った

「で、騰蛇。何をやったんだ」

「……なんでお前に言わなきゃならん」

あぐらをかいた赤髪の同胞にむっとする

「なんでって、そりゃあ」

と、いったん言葉を区切った彼は息を吸い込んで叫んだ

「お前が昌浩と喧嘩するから、姫が心配していて、その姫を見て俺の天貴が心配するからに決まってんだろうがこの馬鹿。どうせお前が何か言ったんだろうが。大体昌浩は自分が間違ってたら謝るように育てたのはお前だろう。その昌浩が謝っていないのはお前が昌浩に傷つくことをしたんだろう。そうだ、それしかない。天貴に謝れ!!」

最初の言葉は天一主義の朱雀らしいなとは思ったが、最後の言葉は理不尽だ

しかし、その言葉を今言ってしまうと、どんなことになるのか想像がつかないのでやめておいた

朱雀は言い切ってすっきりしたのか、さわやかな笑顔になる

「まぁ、いろいろ言ったが、お前があいつの元をつくったんだ。誰よりもおまえ自身が理解しているだろうから、これ以上は言わないでおく」

とかなんとか言っているが、完全に脅しだ

言葉がぐさぐさと胸に突き刺さる

朱雀は立ち上がってから蔀を開けた

「晴明が動く前になんとかしろよ」

じゃないと護衛外されるぜ。ひらひらと手を振り朱雀は部屋を出て行った

「言われなくても分かってるわ」


だが、時すでに遅し。すでに晴明に忠告を受けた後



「大体晴明があの時呼び止めたから、ああもう腹が立つ。そうじゃなきゃもっと早く謝ってたのに」

ぐちぐちと言いながら木陰に身を潜めていると、神気を感じた

顔をあげると六合がそこにいて、眉を寄せている

「うるさい」

一言そういわれた

「なっ、うるさいって「隠れているなら隠れていろ、昌浩に気づかれるぞ」

「あっ」

ここは陰陽寮の庭、こっそり様子を見ていた俺の独り言が大きくて、忠告に来てくれたらしい

「すまん」

素直に謝った

「それは俺に言うべき言葉じゃないだろう」

「分かっている」

そのまま六合は昌浩の元に戻って行った

「分かっている」

下を向いてそういった

ああもう、調子が狂う、彰子にも朱雀にも、いや、朱雀じゃなくて天一か、六合にも心配かけて、そばには昌浩がいなくて、こんな気を揉む生活なんて望んでない

さっさと謝ろう



じゃないと、帰ってきた勾にどやされる、と思ったのも内緒のこと






――――――
ごめんなさい
遅くなりました
1600切番「前回いただいた作品の対で、同時刻のもっくんと昌浩のシーン」だったはず
これでいいの?
自分なりの解釈でやったんですけど
本当に遅くなってごめんなさい
前半は割りと早かったんだけどなぁ
やっぱり期限決めないとだめだぁ
気が乗らなくて、陰陽師のキャラソンをニコ動で探し、その気に
1600ゲット、友人イマワノ氏以外お持ち帰りおっけ……じゃなくて、イマワノ氏にのみ持って帰ってください
書き直す気なしなんで、返品不可で(笑)
h20/2/22
戻る