戻る
紅蓮×昌浩ですので苦手な方はお戻りください



いつもと同じには……





「……皆、陣破れて前に在り」

ぎゃあぁ

一般人に聞こえれば騒音で訴えられそうなはた迷惑な叫び声を残して妖は消滅した

「大丈夫か? 昌浩」

本来の姿に戻っていた紅蓮が昌浩の側へとやってくる

「また、無茶して。たのむから傷を負ってくれるな」

昌浩の頬や腕には戦闘の時に受けた傷が己を主張するように血を流していた

「ごめん」

「まったく、何度同じことを繰り返すんだ? 晴明の孫」

いつもの決まり文句。ここでやり返す元気があるなら心配はない

しかし、今日の昌浩は違った

「だから、孫って……。もういい、帰る」

「おっおい、昌浩」

そういって昌浩は紅蓮に背をむけ歩き出した

「待てって。おい昌浩」

紅蓮は慌てて昌浩を追いかけた

「何怒っているんだ?」

「別に怒ってなんかないよ」

紅蓮の静止も聞かず昌浩はどんどん歩いていく

「それのどこが怒ってないんだ。こっちを向け昌浩」

紅蓮は昌浩の肩を掴むと自分のほうに振り向かせた

そして昌浩の顔をみてぎょっとした

大粒の涙が昌浩の頬を伝う

昌浩は泣いていた。泣いて紅蓮をじっとみていた

「俺のせいか?」
訳の分からない紅蓮は素直に昌浩に尋ねた

「・・・…そんなことは」

昌浩が口ごもるのを見て紅蓮は自分のせいだと悟った

昌浩は紅蓮から顔を逸らそうとしたが、紅蓮が両頬を押さえているため逸らすことができない

紅蓮は昌浩を見つめる

「昌浩。俺はお前が泣いている理由を知りたい。俺のせいだというのならなおさらだ」

「……んだ」

しばらくして昌浩はぽつりと言葉をこぼした

紅蓮はその言葉に驚く

「どうしていつもじい様なんだ。それか晴明の孫のどちらかだ。俺は紅蓮にとってなに? 主の孫? そんな関係ならいらない。側に居てくれなくていい!!」

それはいつも思うこと。彼は、紅蓮は自分を孫としか見ていないような気がして。二人でいるときも晴明の名は必ず出てくる。それが昌浩にはつらかった

「昌浩」

紅蓮は体が熱くなるのを感じた

それは昌浩が紅蓮と付き合うようになってからはじめて言った不満だった

いつも一方的な愛情しか感じられなかったが、ちゃんと昌浩も紅蓮を想っていてくれているということ

「昌浩

昌浩の頬に固定していた手を背中に回し抱きしめる

昌浩の体が強張るのを感じた

そう、昌浩はいつまでたってもこういうことに慣れない。いつも初めてのように反応してくれる。そんな昌浩が紅蓮には可愛くてしょうがないのだ

「馬鹿だなぁ」

つぶやくと腕の中で昌浩が反応した

「そんなこと言ったって俺は「好きだよ。俺の主は晴明だ。でもいつか主が変わることがあっても、俺の唯一の相手はお前だから」

その言葉に昌浩は息を呑む。紅蓮は昌浩以外は好きにならないと言っているのだ

「いつか、俺は紅蓮を置いていってしまうよ」

昌浩は人間で紅蓮は神だ。同じ時を生きることはできない

しかし紅蓮ははっきりと断言する

「そうなっても俺はお前以外を想うことはない。」

そしてにっと笑って続ける

「安心したか?」

昌浩の涙はいつの間にか止まっていた。紅蓮の笑顔につられて昌浩も笑う

「うん。……俺いつか生まれ変わるよ。そして紅蓮に会うたびにきっと紅蓮を好きになる」

「なら俺はお前を探し続ける」

そうして二人は抱きしめあった




――いつもと同じ毎日のなかでのほんの少しの小さな変化












「未来花」「過去華」開始記念、相方・郷佑へ贈る小説
いかがでした? 題名を珍しく先に決めると必ずその通りにいきません。なんでだろう?
希望が紅蓮×昌浩でしたのでそのようにしましたがどうでしょう? 気に入ってくれればいいのですが
とにかく頑張りました。紅蓮、初めてだしたよ。というか初のBL。がこれでいいのか? 
郷佑様のみお持ち帰り可です。よろしければどうぞ

誰か感想是非おねがいします




実はこれ一度消えてしまって泣きそうになりました……







h19/11/9
戻る