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今年の冬はインフルエンザが流行するらしい。
予防接種をちゃんと受けないと、大変なことになると、テレビでやっていた。
でも人は「自分は大丈夫」と思ってしまう性質のようです。
インフルエンザ
「しっかりしろ!晴明の孫!!」
古い日本家屋の一室。
真っ白な獣の様な生き物が声を張り上げている。
「う、うるさいなぁ…。少し静かにしててよ、もっくん…」
もっくんと呼ばれたその獣・もののけは、肩をふるわせながら、
「もっくん言うなぁぁあああ!!」
と雄叫びを上げた。
もののけを、もっくんと言った少年・昌浩は、赤く火照った迷惑そうな顔をもののけに向ける。
「おれ、インフルエンザでつらいんだから…。ちょっとおとなしくしててよ…」
しんそこ辛そうにそう言う顔を見て、もののけは、うっと言葉を詰まらせた。
「これ以上悪化させるつもりか、もののけ」
襖を開けて入ってきた妙齢の女性は、からかう様にもののけに話し掛けた。
「もののけ言うなと言っているだろう、勾!!」
「やぁ、勾陣」
床に伏したままの昌浩が勾陣と呼んだその女性は、昌浩の言葉に手を挙げて応えると、
もののけの首もとを掴んでそのまま部屋の外に出て行ってしまった。
襖を閉める時、ゆっくり休め。と言い残す勾陣に言いそびれた感謝の言葉を胸の中で呟く昌浩だった。
「はーなーせーー!」
つぶれた様な声で勾陣の腕から逃れようとするもののけ。
「そんなに嫌なら、騰蛇に戻れば良いだろう」
………
しばらく間をおいて、一瞬に長身の痩躯をした、男性が現れる。
「解っていた…」
見た目に似合わず、小さな声で呟く。
ほのかに、朱に染まったその頬に、勾陣が指を突き立てる。
「馬鹿だな、お前は」
騰蛇の抗議の声を無視して勾陣は、座る。
庭に面した廊下から足を下ろした勾陣。
それに習って騰蛇も横に座った。
「お前は、強い」
突拍子もない発言に騰蛇は目を私見開く。
「…当たり前だ」
褒められていると理解した騰蛇は少し誇らしげに言った。
「…しかし、脆いな」
またも、騰蛇は目を見開いた。
先ほどとは、対になるような発言。
「何が言いたい」
少し、低くなった声に、臆することなく、勾陣は続けた。
「お前は脆いと言ったのだ」
先ほどから前方しか見ていなかった勾陣は、横目に騰蛇を見る。
そこには、目の据わった騰蛇がこちらを睨んでいた。
「お前の実力は、十二神将一だ。
しかし、お前の精神は脆い。」
それから勾陣の口は滑るように、言葉を紡ぐ。
その口調は意識していないだろうが、騰蛇を責めるようだった。
「お前、昌浩が倒れただけであんなに慌てふためいているのがその証拠だ」
反論をしようにも、間違ったことを言われていないので何とも言いようがない。
勾陣から目線をはずし、俯く騰蛇。
言いたいことを言い切ったのか、今度は勾陣が騰蛇に目を向けため息をついた。
「昌浩は、弱い。故にその心はたくましい。
逆に、お前は強い。故にその心は儚いのだと私は思うよ」
ふてくされたのか、もののけに戻った騰蛇に勾陣は声をかける。
それは先ほどとは違う、まるで慰めるような、愛おしむような優しさがあった。
襖の奥から、静かな寝息が聞こえる。
容態はだいぶ良くなったようで、呼吸音は静かで、落ち着いていた。
先ほどまで話をしていた勾陣が、後ろで立ち上がる音が聞こえた。
私は行くよ。と言い置いて、徐々に足音が遠ざかっていく。
振り返ると、勾陣の背中は廊下の角を曲がろうとしていた。
「……ありがとうよ」
なんとなく、呟いてみた。
聞こえる訳もない。第一、お礼を言う筋合いもない。
なのに無性に有り難かった。
諭すような勾陣の話しかたに、乱れていた自分の心が落ち着いていくのがわかった。
小さく、自分にさえ聞こえるかどうかわからない様な声で呟いたので、勾陣に届いているか解らない。
―――ただ、勾陣の横顔が小さく微笑んでいた。
END
――――――
「春夏秋冬」の天坂陣様からの相互小説でした
陣様ありがとうございます
うん。確かに紅蓮は脆いね
最後勾陣はやっぱり気づいてたんだと思います
陣様は私よりも長く書かれているので見習うところはたくさんありますね
頑張らないと
陣様、これからもよろしくお願いします
(現「a Felice Felix Feliz」里々力里林様となっております)
閉鎖されたようです。お疲れ様でした
h19/12/7
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