紅蓮と勾陣の関係を一言で言い表すならば、戦友、もしくは恋仲だ。
それにもかかわらず、差し出されたものと今日の日付が結びついてもなお、今の状況が飲み込めずに硬直状態に陥っているのは、何かがおかしい気がしてならない。
「おい、騰蛇。一体何に驚いている。そうおかしいことじゃないだろう、世間一般的に考えてみても」
「……世間一般から見事に外れている俺とお前だと何かがおかしい気がするんだが」
過去のことを振り返ってみると、今年のこの出来事がどれだけ異常なのかがよく分かる。それも悲しいことではあるが。
二月十四日、バレンタインデー。勾陣はいっそわざとかと言いたいほどに、毎年このイベントを無視する。あまりにも毎年毎年イベントなどないものとして振る舞われるのは寂しかったので、去年は思い切って西洋風に自分から渡してみた――ら思う存分からかわれたのは苦い記憶でもある。
そう言えば一度、板チョコを無造作に口に放り込まれたことはあるのだが、果たしてあれをカウントしてもいいのかは微妙だ。
「……? 何をぐだぐだぬかしている。要らないなら私はそれでもいいのだが?」
「誰もそんなことは言ってないだろう!」
何故渡す側がそんな脅迫めいたことを言えるのかは今更考えても仕方がないからいいのだが、それは困ると即答してしまった自分が情けなくなるのは、男としては至極当然のことだ。
しかしそんな自分の反応さえ彼女の予想のうちだったのか。くつりといつものように喉の奥で笑った勾陣は、「なら、さっさと受け取れ」と、差し出してきていたものを紅蓮に押し付ける。ちょうど十一ヶ月前(一年前でないところがポイントだ)に同じように、同じようなサイズの箱を押し付けられたことを思い出した。
ふっ、と深くした微笑を一度寄越して、勾陣はそのまま自室へと戻っていった。
残された紅蓮はソファに身を沈めて、押し付けられた――もとい、貰ったものをまじまじと見る。シンプルなラッピングを丁寧に剥いでいって、現れたものに目を見張った。それは確かにチョコレートなのだが、そこらのコンビニやスーパーで売っているような類ではなく、たぶん、デパートとかまで出向かないと買えないようなものだった。
――これは、いわゆる高級品というやつか?
世の男の大半なら「そこまで俺のことを!」と喜ぶべきところなのだろうが、どうにも今までの経験上紅蓮がそんな思考に辿り着けるはずもなく、むしろ――何か企んでないだろうなあいつ、とそちらへ行き着く。
毎年毎年見事なほどにイベントの存在をスルーしていた彼女が、今年は突然、(しかも、おそらく高いものを)当日に渡してきた。隙あらば自分をからかい倒して面白がる彼女が、からかいどころ満載だった自分に対して今日に限ってはそれもなく、素直に渡してそのまま部屋に戻っていった。……これは嵐の前の静けさとか言うやつだろうか。
あまりと言えばあまりな疑惑は、しかし普段の勾陣を思い返してみると妙な信憑性を帯びている。
貰えたことは純粋に嬉しいのに、そうやって穿って見てしまう自分に若干の悲しさを覚えながら、紅蓮はひとまず貰ったものを自室に置いてこようと腰を上げた。まだまだやらなければならないことは残っているし、けれどその間、ダイニングテーブルに無造作に置いておくのも気が引ける。間違って誰かに食べられでもしたらたまらない。
だけれど。
「…本当に」
本当に、何か仕掛けてこないよな、あいつ?
紅蓮の心配はまったくの杞憂だったと言っていい。勾陣は別段何を仕掛けてくるでもなくいたって普段通りで、紅蓮は肩透かしを食らった気分になった。
むしろ彼女は、勝手に穿った見方をして変に気負った紅蓮を不審に思っているようでもあった。そこまでくると、自分の考えはとても失礼なことで、彼女にそんな気はまったくなかった線が濃厚になってくる。
本日一通りの家事を終えて自室に籠っていた紅蓮は、勾陣から貰ったものを見ながら、ぐるぐるとそのようなことを考えていた。
そして、本当にその通りならどれだけ最低な奴なんだ俺、と自己嫌悪にも陥る。例えその通りでなく、紅蓮の予想が当たっていたとしても、紅蓮の予想そものが最低だとは自分で分かっていた。
不意に、部屋のドアがノックされる。
「騰蛇? いるんだろう、入るぞ」
ノックしたのが勾陣だと認識したのと勾陣がドアを開けたのはほぼ同時だ。返事くらい待て、と思うものの、本当に入ってこられるとまずいタイミングの時は即答で駄目だと言っているから、勾陣の方もそれを判断基準にしているのだろう。
「どうした?」
「理由くらい分かっているだろう、騰蛇よ」
ベッドに腰かけるでもなく、立って腕を組んだまま笑顔で言われた言葉は、しかし凄絶な声音で放たれている。まずい何を思っていたのかばれている、と頬が引き攣ってしまい、それはしっかりと勾陣に見られた。
「単刀直入に言おうか」
勾陣は棚の上に置いていた、昼ごろに彼女がくれたチョコレートを指差した。
「あれを受け取ってからお前の様子は明らかにおかしい。そのことについて私なりの答えが見つかったから答え合わせにな。……お前は私に対して何か警戒している。違うか?」
はいそうです、とは口が裂けても言えないので、紅蓮は叱られている子どものように無言を貫き通す。が、沈黙は肯定とイコールなのだと勾陣が分からないはずもない。
バレンタイン当日に、せっかくプレゼントも貰ったのに、喧嘩のようなことになっているのは何故だろう――と思ったのは現実逃避以外の何物でもなく、紅蓮のせいなのは明瞭だった。
「騰蛇。はいかいいえの二択だ、簡単だろう? どうせ何か私に失礼なことでも考えていたんだろう」
お前はエスパーか、と思ったが口に出せる立場ではない。
しばらく沈黙が落ちた。紅蓮は後ろめたさから勾陣と目を合わせられずに視線を彷徨わせる。下手に口を開いたら状況を悪化させるのは、これまた今までの経験上高い確率として有り得た。
はぁ、とあからさまな溜め息が聞こえた。「もういい」と諦めたような声が耳に届き、勾陣が背を向けた気配がした。その時に彼女の腕を掴んで引きとめたのは反射的な行動だった。
肩越しに振りかえった勾陣と目が合う。怒っているのか呆れているのか紅蓮には判断できないが、これはよろしくない状況だということだけはよく理解できた。
怒るのはいい。呆れるのはいい。詰られても甘んじて受けよう、悪いのは全面的に自分だ。
だけれど、もし――もし、紅蓮の様子が勾陣に対しておかしかった理由を、貰ったのが嬉しくなかったからだととられたら? 迷惑と思っているのだととられたら?
長年の付き合いだ、勾陣がそのようなことを思う確率は低いと分かっている。だけれど一度胸をよぎった不安は、勾陣がそうではないよと完全に否定してくれるまで消えはしないだろう。
彼女に対してとても失礼なことを考えていたというのに、どれだけ自分勝手なのかは紅蓮自身が一番よく分かっていた。
しばらく紅蓮を「放せ」と言いたげな目で見ていた勾陣は、しかし不意に表情筋を緩めた。きつかった眼光はふっと柔らかくなり、「分かった、分かったよ」と苦笑混じりに告げられた。それは勾陣が本気では怒っていない証明にもなっていて紅蓮は安堵したが、同時に紅蓮がどれだけ情けない顔をしていたかの証明にもなっていた。
そして彼女は紅蓮が何を不安に思ったのかさえ的確に当ててみせるのだ。
「大丈夫だ、ちゃんと、知っているよ。私からの贈り物をお前が嬉しく思わないわけがないじゃないか」
なかなか断言出来ないことを自信に満ちた声で言われて、紅蓮は思わず「当然だろうが」と返していた。一瞬きょとんと紅蓮を見た勾陣は一拍遅れで「だろう?」と顔をほころばせる。
しかしそれは一瞬後には掻き消え、「さて」と先ほどまでと同じような表情と声音になってしまった。
「私はお前の欲しい言葉をやったんだ。お前も私の問いにきちんと答えるのが筋だとは思わないか?」
今しがたのやり取りに誤魔化されてはくれないようだ。
確かに勾陣の言は一理あるとは思うのだが――じゃあ俺は一体何て答えればいい。
再び目を泳がせ始めた紅蓮に、あからさまに呆れた風情の勾陣は、「なら、騰蛇。もう一度言う、はいかいいえで答えろ」と助け船を出してくれた。
「私がお前に何か仕掛けると思っていた。からかってこないのを不審に思った。だから私を警戒していた。どれかひとつでもいいえがあるか」
「……ありません」
だから本当にお前はエスパーかと言いたくなるくらいに事実をずばずばと言い当てられ、紅蓮は小さくそう答えるのがやっとだった。全てを見透かすような彼女の双眸を苦手だと思うのはこういう時だ。普段はそれにこの上ない頼もしさを感じるのに、それがいざ自分に向けられると気まずさが倍増する。さしてシリアスな件でないことだけが一縷の救いだが、視線は泳ぎ続けたまま未だに勾陣には定まらない。そのくせ紅蓮は勾陣の様子を気配を探って図ろうとしている。
勾陣の様子からするに、勾陣が今回向けてくれたのは100%の素直な好意で、世の男の大半がするように「そこまで俺のことを!」とありがたく思う部分であって、だとしたらそれに対しての自分の捻くれた解釈は先ほどからよく分かっているとおりに最低だ。先ほどからずっと感じていた後ろめたさは大きくなっていく一方で、比例して自己嫌悪も深くなる。
唐突に、その気配が何やら動いたかと思ったら視界に彼女の腕が入ってきて、額に軽い痛みが走った。人差し指で小突かれたらしい。反射で勾陣を見て何をすると言いかけて、言えなかった。不機嫌を隠そうともせずに勾陣は紅蓮を見上げていて、しかしただの不機嫌ではなさそうだった。もしかしてこれは、
「……そんなにおかしかったか」
――拗ねている?
「私が何もせずに素直に渡したのはそんなにおかしいことだったか」
ふっと思いついた可能性はどうやら事実のようだった。一度気付いてしまえば、いくら凄んでみせても、その声音も表情も可愛らしくしか映らない――のは明らかに重症だ。
そんなことはおくびにもださず、紅蓮は「違う違う」と神妙な顔を作った。拗ねさせたのが紅蓮なら、宥めるのは紅蓮の義務だ。
「悪かったのは俺だ、許せ。おかしかったんじゃなくて意外だっただけだ」
「………なんだからかってほしかったのか騰蛇」
「人を軽いマゾヒストみたいに言うな」
たぶんこういう時は黙って抱きしめてやるのが一番なのだろうが、そうしたら今度はデコピンではなく平手か拳が飛んでくるような気がしたし、自分の性格を鑑みると余程の非常事態でもなければ不可能な芸当だったので、代わりに柔らかくした声で言う。
「ただ勾よ、お前、普段の俺への態度思い返してみろ。その上で、お前が何もせず俺に何かを渡す確率を考えてみろ」
限りなく低いことは勾陣も分かっているはずだ。ちなみに一番分かりやすい事例は去年のホワイトデーだろう。
勾陣の表情が少し緩んだように思えるのは、おそらく紅蓮の気のせいではない。紅蓮の発言の正しさを少しばかりでも認めてくれたようだ。
「それ以前に、いつもバレンタインなんてイベントは無視しているだろうが、お前は」
「いつもは忘れていただけだ。去年のお前の様があまりにもおかしかったからだろうな、今年は三日前に思い出した」
「…あれはさっさと忘れてくれ」
去年のことを思い出して紅蓮は本心から呟いた。
「……まぁ、そうだな。お前の予想は、結果的には私に失礼だが、経過的には合っているな」
「は!?」
「いや、確かに何かしらでからかってやろうとは思っていたんだ。いいネタが思いつかなかったから素直に渡す路線に切り替えただけで」
「ネタがなくなるまで人で遊ぶな」
突っ込んでから、彼女の頭に手を乗せた。紅蓮の手によって紅蓮を見上げることが出来なくなったせいか、上目遣いを使われたので紅蓮は勾陣から目をそらした。無造作に可愛いことをするな、と訳の分からない抗議を胸中で行う。
勾陣が笑った気配がしたので、宥めることには成功したはずだ。たぶん。
「騰蛇よ。だが、結局お前は私に失礼だっただろう?」
と思ったら続きがあった。
この先の流れは長年の付き合いの中で何度も経験済みだ。さりげない仕草で手を放してから紅蓮は肩をすくめた。
「はいはい。で、俺に何をしろと言うんだ」
余裕で、何が来るかは分かってますよという体を装っていながら、その実不安に感じていることがひとつある。ないとは思うが、一度機嫌を損ねた以上渡したものを返せと言われる確率は無きにしも非ずで、それはやめてくれと内心で願った。
ところで俺は神の末端に連なる存在のはずなのだが、今しがた俺は一体何に願ったのだろうか。
「そうだな…」
口元に長い指をやって勾陣はしばし考え込んだ。一秒、二秒。心の中で数えていた数が十になったとき、勾陣はよく投げかけてくる挑戦的な笑みを口元にたたえて紅蓮を見上げた。……少しだけ悪い予感がした。
「お前のへたれを治すために、キスでもひとつ、もらうとするかな?」
間抜けな声を出さずにすんだのは、ただあまりの爆弾発言に硬直してしまったからに他ならない。予想外すぎることを言われて、脳も一瞬機能停止した。しばらく経ってようやく行えた「へたれ言うな」の抗議は「話をそらすな」で一蹴されてしまう。
「あぁそうだ」更に勾陣の笑みが意味深長なものになる。おそらく、紅蓮にとっては都合が悪いことに。
「プラスアルファだ、騰蛇。渡したチョコレート、少し分けろ」
「…………同時進行か」
「別々に行うなら付け足す意味がないだろう」
やはりそうかそうしろと言うかお前は! 内心で叫び、しかし紅蓮に拒否権はない。後付けで提示された『プラスアルファ』でハードルが跳ね上がったにしても、だ。
「騰蛇? ほら、早くしろ」と勾陣はあくまで平常だ。ここまで強気にキスを強請る女も珍しいと思う――のはやはり現実逃避以外の何物でもない。現実逃避を試みる回数が今日はやけに多い。
と言うより、――やはり、逆だろう、これは。普通。勾の言っている台詞は立場的には俺が言うものじゃないのか――俺が言えるのかはさておいて。
そう言えば去年も似たようなことを思ったことを思い出した。もしかしてこれから先、このイベントに乗じようとしたときには同じような流れになっていくのだろうか。何気にその可能性は高い。
落ち着け、と、頬が熱を持っているのは自覚しながら自身に念じる。紅蓮にとっても、決して悪いものではない……どころか最良物件とも言えるだろう、この罰ゲームは。
そして勾陣の甘え方というものが、とてつもなく分かりづらいか、こちらが硬直してしまうほどにストレートか、と二極端なのはとうに理解ずみなのだ。
棚に置いてある箱の中から無造作にひとつを取り出して、口に含む。舌の上でとろりと溶ける上品な甘さは苦みも強く含んでいた。彼女の頬に両手をかけて仰のがせるやいなや触れ合わせると、唇伝いに彼女が笑っているのがよく分かった。歯を立ててふたつに割ったうちの一つを送り込む。舌先は触れあったが絡まることはなくそのまま静かに離れた。
「出来るじゃないか」
「この程度で感心するな」
これ以上の行為だって何度もしているというのに、未だにキスひとつで感心されても情けないばかりだ。
「ほう? 言うじゃないか、騰蛇」
――しかしくすくすと笑う勾陣の頬にも薄く朱が刷けているのは自分が出した色だと思って間違いないだろう。そう考えると照れが前面に出て若干難くなっていた表情が崩れていくのだから自分は単純だ。
けれどもここまで先手先手を取られ続けいいように遊ばれ続けるのは少し、いただけない。と、不意に思った。
そして相変わらず強気でイニシアチブを握ったままの勾陣に、紅蓮はもう一度、今度はプラスアルファはなしで、口付ける。途端彼女の体が僅かに強張った。この女が不意打ちに弱いのは昔から変わらない。
互いの口内はまだ、チョコレートの香が強く残っていた。
次に唇が離れたときはきっと、先より濃い朱に頬を染めた彼女を拝むことが出来るだろう。
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製品名:シュガープランク
成分:結局バカップルなへたれと男前がお送りするバレンタインの一幕
製作者:碧波琉
製造日:2009/02/14
賞味期限:ないと思えばありません。あると思えばお好きに設定してください。
備考:2/14〜2/28の間のみフリー。
その後は煮るなり焼くなり曝すなりお好きにどうぞ。
期間内にご連絡を頂ければ持ち帰りはいつになっても構いません。
+
+おまけ+
紅蓮とのやりとりを終えて自室に戻った勾陣は、部屋のドアを閉めてからドアにもたれかかり、小さく息を吐いた。
二度目は流石に予想外だった。と言うよりは、あのタイミングで向こうが仕掛けて来るとは思っていなかった。からかってやって、そうしたらいつものように「お前なぁ……」とでも呟きながら柔らかく笑って、それで終わるのだと思っていたが外れてしまった。――決して、悪い外れ方ではなかったなどとは、奴には言ってやらない。
……ひとつだけ、小さく、嘘を吐いた。
最初はからかうつもりだった――それは嘘だ。ネタがなくなったから――それも嘘だ。ネタならいくらでもあったのだ、それこそ先ほどのようにこちらからキスでも強請ってやって、それと交換だ、とでも言ったなら、さぞや慌てふためく紅蓮の姿を見ることが出来ただろう。
たまには素直になってやってみてもいいだろうと、小さな気まぐれがそれをさせなかった。
「それを、あのたわけ……」
何を変に穿った解釈をしていた。……原因の大半が、紅蓮が言ったように、普段の自分にあるのだと勾陣は重々理解しているけれども。三分前も思いきりからかい倒してきたばかりだ。
拗ねなかったと言ったら嘘になるだろう。けれど、ただ素直にイベントに乗じてみただけだと分かった後の紅蓮の笑み崩れた顔を思い出して、勾陣はくすくすと笑った。どれだけ嬉しかったかを如実に伝えてきた紅蓮の表情に、不貞腐れていた原因全てがどうでもよくなってしまうとは自分も大概だ。
認めてしまうのは未だに軽く癪だが、直に言うことはおそらくないだろうから、もうこれくらいは認めておいてやるかと、勾陣はやはり強気にそう思った。
それが単なる照れ隠しにすぎないことは彼女自身も気づかない。
鏡台の前に置いていた、去年のこの日に紅蓮から貰った腕時計を指先で撫でながら、ひとり呟く。
「来月を、楽しみにしておくよ。騰蛇」
彼のことだ。言わずとも三倍返しに近いことはしてくるだろうし、今回は勝手に穿った見方をしていた分も上乗せされることだろう。そしてプレゼント選びはさんざ迷って考えて時間をかけるのだ、きっと。それくらいの自惚れは許される。
渡される時は、どうやって反応してやろう? 来月も素直になってやるか、からかってやるか。どちらにせよ、紅蓮は過度に緊張するのだろうが。その様が容易に想像できて、勾陣はまた、くすくすと笑う。
とてもとても幸せそうなその笑みは、誰に見られるでもなく、それでもしっかりとただひとりだけにそそがれていた。
苦くて甘い恋の味を砂糖菓子のいたずらに添えて、
さぁ、チョコレートおひとつ、いかがですか?
いくら連絡済とはいえ、更新遅すぎだろう、と思ったので、履歴には載せてないって言う。さぁ、チョコレートおひとつ、いかがですか?
こういう書き方すごく憧れます。
人 日 展 現 連 鎖 中 表